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2023.09-11 行きつ戻りつ、東北旅行と鵼

  • 執筆者の写真: 葛野鹿乃子
    葛野鹿乃子
  • 2023年11月27日
  • 読了時間: 9分

更新日:1月30日

1.しばらくはゆっくり……?


 文フリ大阪が終わって、長らく書いていた長編も完成したので、久しぶりにゆっくりした時間を満喫しています。


 暑さも真夏の頃に比べると少し和らいだので、買ったばかりの茶葉で紅茶を入れて、文フリで買った本を読んだりしています。久しぶりの紅茶の味も香りも、脳髄が麻痺するほど美味しくて頭がおかしくなりそう。買い溜めていた本でも読みながらのんびり秋の日を過ごす……というような生活を、文フリが終わった頃は夢見ていました。


 ……夢見ていたんです。のんびりするのは好きなのですが、本当にそんな時間の使い方をしていいのかみたいなことを考えたり、新しいことを思いつくともう創作せずにはいられないというか。もうそういう体質になってしまったみたいです。




2.既刊作品をウェブに再録


 長編執筆もひと段落ということで、そろそろ足元の地固めをやろうと思います。

 ツイッター(X)の方でもちょこっと言いましたが、在庫切れの既刊作品をウェブのどこかで再録するための準備に取りかかっています。

 読み返すと「こんなにいい作品なのに、在庫切れのままはあまりに惜しすぎる!(自画自賛)」と思いまして、編集作業をしています。思い入れのある作品はもちろん、頒布数の少ない作品もあるので、やっぱり読めるところは作りたいと強く感じました。


 というわけで、在庫切れ既刊6作品をウェブサイトとカクヨムに再録・更新しました。

 10月から始めて、今週末で6作品目の更新を終えます。


  • 「旅の宿トマリギ亭奇譚」

  • 「カンテラを灯す夜」

  • 「氷の花」

  • 「夕べには海へ」

  • 「魔女の季節 ~春迎えの魔女が営む喫茶店のSS集~」

  • 「絵本の国と冬のばら」


 作品ごとに画像やバナーを作ったり、「カンテラを灯す夜」は挿絵に使っていたカンテラの画像も一緒にアップしました。編集後記として各作品の振り返りの雑文もウェブサイトの方に掲載していますので、ウェブサイトの方が内容的には濃いものになっています。


 再録にあたって、当時書いたものを損なわない程度に文章を少し直しています。

 ですが、「夕べには海へ」だけ少し全体的な変更があります。序文を読むと一目瞭然ですが、妙な文章の羅列を追加しています。

 ある旅人が書いた独白のような紀行文の断片、というのは変わらないのですが、ただの浮草ぐらしだった旅人にはどうやら目的ができているようです。キーワードに「SF」や「パラレルワールド」を列挙していますが、ある意味初版のIFストーリーのようなものになっていて、現在制作中の長編が完結したとき、意味がわかるものにしたいと思っています。




3.振り出しの季節


 新しい創作のネタを練ってはこねている最中です。

 ひとつはようやく全体の構成が決まった長編です。また長編かよと誰よりも思っているのは私です。ひと通り書いてから告知などをしたいので、この長編が出るのは多分再来年くらいです。

 来年は別の短編か短編集を出したいと思います。


 長編の方は構成が決まったのでキャラクターメイク中です。

 曖昧だったものが試行錯誤の末、ひとつの形になっていく過程や、過去や性格が決まっていくのが楽しいです。人格や性格の奥に心の闇を煮詰めるのが楽しくて楽しくて……。どうしてそんな人になったのかを分析するみたいですし、キャラの解像度がどんどん上がっていくのも面白いです。


 この辺りはどうしても性癖が出ます。作品として昇華する段階になるとあまり表に出ないのですが、文章より視覚からくるフェチが強いので、表に出てないだけかもしれません。

 

 新作製作熱が収まってくると、11月も半ばに少し落ち着きました。

 落ち着きすぎて何のやる気もない症候群に陥っています。


 仕方がないのでほぼ何もしていません。新作の1~3話を書いたりはしていますが、こう、文章が納得いかなくて前に進まない状態になりました。もっと良くできると思って何回も読み返していて、最終的にこの情報の出し方で読み手がついてくるかなと不安になったりしている状態です。時間を置いてから見直しから始まります。




4.連休で東北へ




 金曜日に休みを取って、三日間東北へ行ってきました。毛越寺、中尊寺、えさし藤原の郷、気仙沼方面、厳美渓を回りつつ、あとは道の駅などに寄りました。


 紅葉は時期的にもう終わっているだろうと思っていましたが、まだ綺麗に残っていてじっくり見て回ることができました。特に毛越寺と中尊寺の紅葉は綺麗でした。この辺りに行ったのは中学の修学旅行のとき。どんな場所かほとんど記憶になくって逆に楽しみだったのですが、落ち着いていて静かで、久しぶりにお寺を堪能しました。


 えさし藤原の郷は前々から行ってみたい場所のひとつでした。

 京都では無理ですが、寝殿造りの中を歩いてじっくり見られるんです。奥州藤原氏の寝殿造りの館と、伽羅御所、端折りますが他にも色々あります。時代劇のセットによく使われているので、資料館にはロケの資料なども展示されていました。美術さんが描いたセットのイメージ画もあってテンション上がりました。


 土曜日は全国で気温が一気に下がる日でしたが、東北は5℃でした。朝から雪です。

 だいぶ関西の気候に慣れてきたところなので北国出身とはいえちょっと心配でした。寒くても動いていれば氷点下でも平気なのですが、立ち止まると駄目ですね。少し寒かったです。その分空気が冷たく澄んでいて気持ち良かったです。山に雪が降り積もる様子や、柿や楓に雪が積もる様子が本当に綺麗で飽きませんでした。(雪の写真は車窓から撮ったので写真はちょっとぶれ気味ですが……)




5.「鵼の碑」のせいで作業が手につかない!!


 さて、せっかくゆっくりしようと思ったのに。

 困ったことに、先日好きな作品の最新刊が出まして。

 文庫で揃えているので文庫出てから買おうと思っていたのですが、本屋で実物を見てしまうと読みたくて読みたくてたまらず、つい買っちゃいました。「鵼の碑」を!


 わくわくしながら読み始めましたが、自分が生きている世界に百鬼夜行シリーズの最新刊があることが信じられない思いです。

 「邪魅の雫」まで読み終えた高校生のあの日から、どれだけこのときを待ちわびたでしょう。その間、今昔百鬼拾遺三冊を舐めるように繰り返し読んだり、怪談三部作を読み返したり、巷説シリーズを脳髄に刻みつけるように読み込んだり、とにかく読んでいました。もうどれを何回読んだか覚えてないくらいには読みました。巷説無印が読み込みすぎてぼろぼろなので、保存用にもう一冊買ってもいい気がしてきます。



 ※以下、ネタバレ含めて感想をただ語るだけなので読まなくても大丈夫です。


 「百鬼夜行 陽」にあった「墓の火」「蛇体」も読み返してきました。

 総一郎のホテルが舞台だと示されていたので、登場が楽しみで仕方なかったです。「墓の火」で示された、二十年前の植物学者の不可解な死。そして蛇を怖がる女性の記憶が蘇るところまで描かれていたので、本編でこの二つがどんなピースになるのか、わくわくでした。


 鵼は色んな動物のキメラみたいな妖怪ですが、今回は蛇、虎、鵺など、部位ごとに章タイトルがあって話が平行に進みます。それを知ったとき「ああ、ひとつの章で事件の一部しか見えないんだな」とすぐに納得できたし、鵼という題材の構成として面白いなと思いました。最終章を読み終わると、本当に鵼というよくわからないものの幽霊みたいな話でした。二十年前に何かが起こっているけど、もう当事者はほとんどいなくて何が起こったのかはわからないし、そもそも現在では何も起きていない、ただ碑だけ残っている。そんな話でした。何も起こってないのにこの厚み……と思いました。


 以前からそうですが、巷説シリーズ(江戸末期)→書楼弔堂シリーズ(明治)→百鬼夜行シリーズ(昭和)と全部のシリーズが繋がっていますが、今回はがっつり濃厚な繋がりでしたね。

 私は巷説シリーズが大好きなので、巷説シリーズで起こったことが昭和期になっても影響を及ぼしているという構図がすごく好きです。お面と榎木津家の仕掛けがどんなだったかすごく気になります。


 今回、「後巷説」で登場した人物の子孫が登場しました。一白新報の字が出た瞬間わかりました。それも奇談怪談などの記事を書いていました。「後巷説」は百介の死で終わりますが、その後、与次郎がどんな人生を歩んだのか、別の人の口から語られます。百介の蔵書を与次郎が継いだことと小夜さんと結婚したこと、京極堂の曽祖父(洲斎)が百介や又市たちと関わり合いがあることが明言されました。ある陰陽師と仕掛けをしたということはさりげなく示されていましたが、京極堂にも伝わっていたんですね。


 「書楼弔堂」では、百介→百介の家族(与次郎)→中禅寺輔(京極堂祖父)→弔堂主人(龍典)へ、百介の蔵書が受け継がれていますが、京極堂は今回「僕の古本屋の師匠筋に当たる人が蔵書をすべて引き取った」と言っています。……師匠だったんだ。

 今まで京極堂は師匠の話をあんまりしてなかったはず。たくさん読んだけどそれもほとんど社会人になる前だし、全部の文章を覚えているわけじゃないので曖昧ですが、他に師匠の話してたかな。今度探してみようと思います。


 市雄がどうして又市と同じトレードマークなんだろうと思ってざわついてましたが、最後に倫子と寛作と並んだことでようやく腑に落ちました。思えば倫子の台詞、読み返すと納得のいく口調です。碑が光っても誰も救われなかった。登和子を救ったのは木場修の現代の理であって、江戸の頃、又市たちが仕掛けに使っていた理は、もう昭和の世では通用しないんですね。


 初めて読む文章なのに、京極堂たちの変わらないやり取りや呼吸がそこにあって、不思議な気分になりました。タバコをもてあそんでる関口君にマッチ渡して灰皿をすっと移動させるさりげないシーンが何ともいえない。改めて面白い関係の友達だなあと思いました。

 十四歳のときに力仕事をしないと誓った男に、新たな描写が追加されていました。この二十年間走ったことがない男だと言われていました。ものすごくどうでもいいけど面白い描写で溢れていて読むのが楽しすぎました。電車の中とか会社の中じゃなくてよかったです。


 次回は東北で、ヤマビコだそうです。

 インタビューを読むと色々重なったことで執筆が遅れたとのことだったので、次回作はもっと早く出るかもしれませんね。あと郷嶋さんの登場が地味に嬉しかったので、また出ないかなとちょっと期待していたり。あと関口君が仲良くなった人は大抵捕まるか死ぬかするので、久住さんに何もなくてよかったですね。


 一週間ずっと家で読んでいました。(会社の鞄に入れると重いうえパンパンになるので諦めた)

 読み終わったので久しぶりにパソコンに触っています。

 久しぶりに百鬼夜行シリーズを通しで読みたくなりましたが本が溜まっているのでそれはそのうちやろうと思います。いや、その前に作業を……。

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