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2023.09 在庫切れ既刊作品

在庫切れ既刊作品のこと


 9月の文フリ大阪も終わりまして、少しまったりしながら過ごしています。

 暑さも真夏の頃に比べると少し和らいだので、買ったばかりの茶葉で紅茶を入れて、戦利品を読んだりしています。久しぶりの紅茶の味も香りも、脳髄が麻痺するほど美味しくて頭がおかしくなりそう。


 長編執筆もひと段落ということで、そろそろ足元の地固めをやろうと思います。

 ツイッター(X)の方でもちょろっと言いましたが、在庫切れの既刊作品をウェブのどこかで再録するための準備に取りかかっています。

 読み返すと「こんなにいい作品なのに、在庫切れのままはあまりに惜しすぎる!(自画自賛)」と思いまして、編集作業をしています。思い入れのある作品はもちろん、頒布数の少ない作品もあるので、やっぱり読めるところは作りたいと強く感じました。


 今年のうちにお目見えできるようにしますので、もうしばしお待ちいただければと思います。




ヌエのせいで作業が手につかない!!


 さて、せっかくゆっくりしようと思ったのに。

 困ったことに、先日好きな作品の最新刊が出まして。

 文庫で揃えているので文庫出てから買おうと思っていたのですが、本屋で実物を見てしまうと読みたくて読みたくてたまらず、つい買っちゃいました。「鵼の碑」を!


 わくわくしながら読み始めましたが、自分が生きている世界に百鬼夜行シリーズの最新刊があることが信じられない思いです。

 ずっと、ずっと、「邪魅の雫」を読んだ高校生のあの日から、どれだけこのときを待ちわびたでしょう。その間、今昔百鬼拾遺三冊を舐めるように繰り返し読んだり、怪談三部作を読み返したり、巷説シリーズを脳髄に刻みつけるように読み込んだり、とにかく読んでいました。もうどれを何回読んだか覚えてないくらいには読みました。巷説無印が読み込みすぎてぼろぼろなので、保存用にもう一冊買ってもいい気がしてきます。



 ※以下、ネタバレ含めて感想をただ語るだけなので読まなくても大丈夫です。


 「百鬼夜行 陽」にあった「墓の火」「蛇体」も読み返してきました。

 総一郎のホテルが舞台だと示されていたので、楽しみで仕方なかったです。「墓の火」で示された、二十年前の植物学者の不可解な死。そして蛇を怖がる女性の記憶が蘇るところまで描かれていたので、本編でこの二つがどんなピースになるのか、こっちもわくわくでした。


 鵼は色んな動物のキメラみたいな妖怪ですが、今回は蛇、虎、鵺など、部位ごとに章タイトルがあって話が平行に進みます。それを知ったとき「ああ、ひとつの章で事件の一部しか見えないんだな」とすぐに納得できたし、鵼という題材の構成として面白いなと思いました。最終章を読み終わると、本当に鵼というよくわからないものの幽霊みたいな話でした。二十年前に何かが起こっているけど、もう当事者はほとんどいなくて何が起こったのかはわからないし、そもそも現在では何も起きていない、ただ碑だけ残っている。そんな話でした。何も起こってないのにこの厚み……と思いました。


 以前からそうですが、巷説シリーズ(江戸末期)→書楼弔堂シリーズ(明治)→百鬼夜行シリーズ(昭和)と全部のシリーズが繋がっていますが、今回はがっつり濃厚な繋がりでしたね。

 私は巷説シリーズが大好きなので、巷説シリーズで起こったことが昭和期になっても影響を及ぼしているという構図がすごく好きです。お面と榎木津家の仕掛けがどんなだったかすごく気になります。


 今回、「後巷説」で登場した人物の子孫が登場しました。一白新報の字が出た瞬間わかりました。それも奇談怪談などの記事を書いていました。「後巷説」は百介の死で終わりますが、その後、与次郎がどんな人生を歩んだのか、別の人の口から語られます。百介の蔵書を与次郎が継いだことと小夜さんと結婚したこと、京極堂の曽祖父(洲斎)が百介や又市たちと関わり合いがあることが明言されました。ある陰陽師と仕掛けをしたということはさりげなく示されていましたが、京極堂にも伝わっていたんですね。


 「書楼弔堂」では、百介→百介の家族(与次郎)→中禅寺輔(京極堂祖父)→弔堂主人(龍典)へ、百介の蔵書が受け継がれていますが、京極堂は今回「僕の古本屋の師匠筋に当たる人が蔵書をすべて引き取った」と言っています。……師匠だったんだ。

 今まで京極堂は師匠の話をあんまりしてなかったはず。たくさん読んだけどそれもほとんど社会人になる前だし、全部の文章を覚えているわけじゃないので曖昧ですが、他に師匠の話してたかな。今度探してみようと思います。


 市雄がどうして又市と同じトレードマークなんだろうと思ってざわついてましたが、最後に倫子と寛作と並んだことでようやく腑に落ちました。思えば倫子の台詞、読み返すと納得のいく口調です。碑が光っても誰も救われなかった。登和子を救ったのは木場修の現代の理であって、江戸の頃、又市たちが仕掛けに使っていた理は、もう昭和の世では通用しないんですね。


 初めて読む文章なのに、京極堂たちの変わらないやり取りや呼吸がそこにあって、不思議な気分になりました。タバコをもてあそんでる関口君にマッチ渡して灰皿をすっと移動させるさりげないシーンが何ともいえない。改めて面白い関係の友達だなあと思いました。

 十四歳のときに力仕事をしないと誓った男に、新たな描写が追加されていました。この二十年間走ったことがない男だと言われていました。ものすごくどうでもいいけど面白い描写で溢れていて読むのが楽しすぎました。電車の中とか会社の中じゃなくてよかったです。


 次回は東北で、ヤマビコだそうです。

 インタビューを読むと色々重なったことで執筆が遅れたとのことだったので、次回作はもっと早く出るかもしれませんね。あと郷嶋さんの登場が地味に嬉しかったので、また出ないかなとちょっと期待していたり。あ、あと関口君が仲良くなった人は大抵捕まるか死ぬかするので、久住さんに何もなくてよかったですね。


 一週間ずっと家で読んでいました。(会社の鞄に入れると重いうえパンパンになるので諦めた)

 読み終わったので久しぶりにパソコンに触っています。

 久しぶりに百鬼夜行シリーズを通しで読みたくなりましたが本が溜まっているのでそれはそのうちやろうと思います。いや、その前に再録の作業を……。

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