​化け物と万華鏡

 鬱蒼とした森の中に、無数の墓標がひしめいている。

 ここは人とも動物とも違う、化け物たちの墓場だ。

 人を食べる化け物は恐れられ、狩られて次第にその数を減らしていった。

 この墓場には、狩られてうち捨てられた化け物の骸が眠っているのだ。

 

 ここには同じ化け物の墓守がいる。

 捨てられた仲間の骸をあわれに思って、この化け物が土の下に埋めて墓標を立ててやったのだ。

 それからずっと、彼はここで墓守をしている。

 化け物は墓荒らしをする人や犬を追い払う。人は時折訪れて、化け物の骨を掘り返そうとする。

 化け物の肉や骨は高い薬になるらしい。化け物は仲間の眠りを守ろうと、いつも目を光らせていた。

 だが仲間のいない、ひとりぼっちで墓守をする日々に化け物は少しずつ疲れ、心をすり減らしていった。

 

 三日月がまどろむように浮かぶ夜のこと。

 化け物がいつものように墓の間を歩いていると、土の上に金属の小さい筒がひとつ落ちていた。

 動物ではない。訪れた人間が落としたものかもしれない。

 化け物は不審に思ってそれに近づき、つま先でつついてみた。

 それは土の上をころんと転がるだけで、襲いかかってくるわけではなさそうだった。

 化け物は指先で筒をつまんで目の前にぶら下げてみる。

 片方にガラスみたいな透明なものが貼りつけてあった。

 振ってみると微かに音がした。何が入っているだろうと化け物はそれを覗いてみた。

 すると化け物の目の前に、ふしぎな光景が飛び込んできた。

 赤や青、白や緑で作られた丸い文様が、きらきらと光っているのだ。

 これはなんだろう! 化け物は筒を大きく振ってみた。

 その拍子に筒が角度を変えると、今度は色が勝手に動いて別の模様に変わったではないか!

 化け物は次々に筒を回して模様を変えていった。模様は光りながらめまぐるしく移り変わっていく。

 こんなきれいなものがこの世にあるなんて思わなかった。

 ひとりぼっちの墓守としての暮らしに、眩い色が広がったのだ。化け物の心は喜びに震えた。

 化け物はそのふしぎな筒をいつまでも覗きこんで眺めた。

 相変わらず人間が墓荒らしにやってくる。

 生き残った化け物はひとりぼっちで墓守を続けている。

 寂しい暮らしだが、化け物はそれでも満ち足りていた。

 ふしぎな景色を見せる小さい筒が、暗く冷たい墓場しか知らない化け物を、墓守として繋ぎ止めてくれているのだ。

あとがき

 こんにちは、葛野と申します。

 このお話は2018年の文フリ大阪で頒布した、フリーペーパーにつけたSSです。

 トナカイの森のお話がどういうものか、試し読みできるように書いたものなのでとても短いです。

 フリーペーパーはイベントごとに作るので、イベント一回きりで配ったまま終わりというのは寂しいと思い、

 ウェブで公開しようと思いました。

 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

© 2018 by tonakaiforest. Proudly created with Wix.com

This site was designed with the
.com
website builder. Create your website today.
Start Now